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十二月に入り、あと少しで冬休みというある日の休憩時間、
前触れもなく沙紀が、こんなことを言ってきた。



「今週の金曜日、うちに泊まりに来ない?」



――と。

週末にある遠い親戚の結婚式に参列するため、両親が揃って前泊するらしい。
金曜日の夜から土曜日の夕方まで、家には誰もいないという。

一般的な常識は、持ち合わせているつもりだ。

ただ訪問するだけならまだしも、家族の留守中に泊まり込むのはどうかと、
俺はほんの少しだけ返事を躊躇った。
けれど正直なことを言えば、それは嬉しい申し出でもあった。


沙紀と初めてセックスをしたのは、つい最近のことだ。
アクシデントと言ってもいいくらいに、非日常的なシチュエーションだった。
とはいえあれ以降、二人の距離が縮まったのは確かで、その後数回、
俺の家に遊びに来た沙紀と体の関係は持っている。

恋人と肌を重ねる。
キスをして、抱きしめる。二人の汗を混ぜ合って、快感を貪る。
それは自分がこれまでに想像していた以上に魅惑的なものだった。

相手が沙紀だからなのかどうかは、経験値不足のせいでわからなかった。
けれどそれを抜きに考えても、
時間や機会があるのなら、一緒に過ごしていたいと純粋に思う。

心の中の天秤が、カタン、と一方に傾く。



「……いいのか?」
「うん。一晩中一緒にいられることなんて滅多にないもんね」



沙紀はにっこりと微笑む。
まるで男と一晩過ごす意味を知らないとでもいうほどに、無邪気な笑顔。



「それに……見せたいものがあるし」



彼女はおもむろに目をそらすと、
ふわふわした猫毛を指先で遊ばせながら台詞をつけ足した。



「見せたいもの?」
「うん。それはまた……金曜日に」



思わせぶりに言い残すと、彼女は始業のチャイムが鳴る前に自分の席へと戻っていった。







そして金曜日の夜。
俺は自宅で夕飯と風呂を済ませると、着替えなどを入れた鞄を手に沙紀の家へ向かった。


自宅の最寄り駅から、上り電車で二駅。
ホームを出ると、改札口には見慣れた制服ではなく、トレーナーにジーンズという
普段着の沙紀が迎えに来てくれていた。

並んで夜道を歩き、静かな住宅街に足を入れる。

二階建ての、いたって普通の外観をした家の玄関をくぐると、
いつも沙紀から香るのと似たような匂いがした。



「お邪魔します」
「うん。いらっしゃいませ」



誰もいないと聞かされていたとしても、
彼女の家に上がるのは緊張するものだなと思う。
一方、沙紀はといえば、それこそ平常運転という様子だ。



「神木くん、ご飯もお風呂も済ませてきたんだっけ」
「ああ。沙紀は?」
「私も入っちゃった。もうずっと家にいるよね?」
「そうだな」



さすがに風呂まで借りてしまうのは気が引ける。
どうせ家からは出ないだろうと思ってのことだ。

数段先に階段をあがる彼女からは、
シャンプーのものなのか、フローラル系のいい匂いが漂っていた。

階段を昇り切り、二階の廊下の突き当たりまで案内される。

ずいぶん昔、きっと彼女が子どものころからあるのだろう。
その部屋のドアには、『さき』と、少し色褪せた木の文字板が貼りつけられていた。


中に入れば、ピンクと白とでまとめられたインテリアが出迎えてくれる。

桜色のカーテンが閉められた窓際にはシングルベッドが置かれている。
布団には、ところどころパッションピンクの花柄がアクセントになった、
白いシーツが掛けられていた。

ベッド脇に丸い、ガラス天板の座卓があり、
その上には白いノートパソコンが閉じた形で載せてある。

毛足の長いラグは白。そこに、これまたピンクと赤のクッションが二つ置かれていた。


想像していたのとだいぶ違う。
イメージ通りだったのは、ベッドとは反対側にある、天井まで届く高さの本棚くらいか。

嫌味のつもりはなく、俺は正直な感想を口にする。



「なんというか……沙紀っぽくない部屋なんだな」
「やっぱり? これね、お母さんの趣味なんだよ。特に色は。
 一緒に買いに行っても、私の意見はだいたい、
 "だめよ女の子なんだから"って却下されるんだよね」



沙紀は苦笑しながら、座って、と俺を促す。
ラグに腰を下ろし、背もたれ代わりにベッドに背を預けると、
彼女は用意していたらしいお茶をコップに注いでくれる。



「私は……本棚とパソコン以外は何でもいいんだけどね」



本棚を視界に収めて、なるほどと俺は納得した。

オフホワイトの本棚には飾り気は全くなくて、
そこにだけは、やけに沙紀らしさを感じた。
棚に並んでいるのは、小説や図鑑、情報誌に参考書。
すでに隙間はほとんどない。

彼女が言うには、
「本棚で大事なのはちょうどいい奥行と、段の高さを細かく変えられること」
そして、
「パソコンはスペックが良ければ見た目はなんでもよかったの」という。

微笑ましく聞いていると、彼女はおもむろに机に置かれたパソコンの電源を入れた。
起動する音がして、ディスプレイに緑色の惑星のような壁紙が現れる。



「綺麗だな、コイツ」
「でしょ? お気に入りだよ」



生物の教科書で見たことがある、ボルボックスの顕微鏡写真。
こんな画像をどこで見つけて来たのか、黒い背景に映るそれはとても美しい。
前に好きだと聞いたことがあったな、と思いながら、
ふと、先日の沙紀の言葉を思い出した。



「そういえば、何か俺に見せたいものがあるって言ってなかったか?」
「え? あー……、うん……」



尋ねると、沙紀の言葉は突然、歯切れが悪くなる。



「なんだ?」
「うーん…………」
「ん?」



彼女は考え込むように黙ってしまう。
何がなんだか、さっぱり分からず首をかしげていると、
少しずつ、沙紀は言葉を選ぶようにして話し始めた。



「えと、見せたいものというか、知って欲しいことがあるっていうか……」
「知って欲しいこと?」
「うん。私は神木くんのこと、もっと知りたいと思ってて……。
 でもそれとおんなじくらい、私のことも知って欲しいと、思ってる」



それは同感だ。相互理解、素晴らしい言葉だと思う。
頷くと、沙紀は続ける。



「けど、知りたいとも知って欲しいとも思ってるのに、
 私……ちょっと、隠してることが……あって」
「隠してること?」
「……うん」



誰にでも秘密はある。誰にも言わなくてもいい秘密もある。
けれどいま沙紀が言おうとしているものは、俺にも関係のある秘密なのだろうか。



「えと……前に、その……一緒にやらしくなろって言ったの、覚えてる?」
「……ああ」



それはよく覚えている。忘れられるとも思えない。
初めて体を繋げた時、沙紀が口にした言葉だ。

再び口を噤んだ彼女を見ると、頬がうっすら赤く染まっていた。



「あのね、私ね……、たぶん人より……やらしいんだと、思う」
「……」
「私……これ買ってもらってから色んなサイトみたの」



パソコンは時折、籠った熱を吐き出すようにファンの回転数を上げる。
そばにあるマウスに指をこつんと当てて、彼女は目を伏せる。



「――……えっちな、サイト……も」



好奇心に逆らえなくて、と、沙紀は誰にともなく言い訳をするように呟いた。

彼女なら不思議はないなと、頭の中の、かろうじて冷静な部分が頷いた。
女の子でもそういうものを見るのかと、驚きもある。

けれど、強い好奇心を持っている沙紀が、
ありとあらゆる人間と知識と欲とに繋がれる手段を手にした時、
垣間見ようとしない、わけがない。

そもそも俺自身、自室に置いたデスクトップで、ことあるごとにインターネットに接続する。
アダルトサイトの世話になることも、ないとは言わない。



「色んな、いやらしいサイト見てみたの。
 自分が……どうゆうのが好きなのか、興味があって」



沙紀は、んく、と喉を鳴らす。
緊張しているのか、もじもじと指先を弄っている。



「最初はね、普通のでもドキドキしてたんだ。
 ……けど、もっとドキドキするの見つけちゃって――……」



ふ……、と一呼吸を置いてから、沙紀は小さく口を開く。



「女の人が……その、……いじめられてる、ようなやつ。縛られちゃったりとか、
 無理やり……されちゃったりとか。えすえむ、っていうか……なんていうか」



たどたどしい沙紀の告白は、俺の脳を焼いた。

刺激の強さは、周回遅れで頭にインプットされていく。
飲み切れない何かを腹に落とし込んだのか、
自分の喉がごくりと、渇いた音を立てたのが聞こえた。

言葉を失っている俺を、沙紀は怖々と見上げている。

何でもいい。
言葉を掛けなければ、むやみに沙紀を不安がらせてしまう。

俺は、水分を失った口からかすれた声を絞り出した。



「――つまり、そういうのが好きだったってことか?」
「……うん。見せたいものがあるって言ったのは……コレの、こと……」



沙紀はパソコンに手を伸ばし、ブラウザを起動させるとあるサイトを表示させる。
ディスプレイにはすぐに何枚もの画像が現れ、俺はその内容に再び声を失った。


それは、少女のイラストだった。


俺たちと同年代の女の子が、裸でいる。
革の手枷で拘束され、さめざめと涙を流している。
全身を縄でがんじがらめに縛られて、梁から吊るされている。
横たわっているところを男たちに囲まれて、全身に精液をかけられているものさえあった。

そのどれもが、目を覆わんばかりに卑猥だ。



「……こんなの、空想の中だけの話って……、
 現実じゃない、誇張されてるものだから気になるだけだって……思って、たんだけど」



沙紀の声をどこか遠くのもののように聞きながら、
俺は画面から少しも目を離すことができずにいた。

頭の中でぐちゃぐちゃに入り乱れているものが、
混乱なのか、それとも興奮なのかがわからない。



「この間、初めてエッチして、すごくすごく、気持ちよかったの。
 電車で触ってもらえたのも……図書室で、してもらえたのも」



沙紀は、不安に潰されたように体を小さく縮めながら、ぽつりぽつりと言葉を続ける。



「すごく痛かったのに、ものすごく気持ちよかった。
 ……きっと、普通じゃないことしてるのに、それが……気持ちよくて。
 あ、間違いないなって思った。……私、そういうのが好きなんだ……って」
「……沙紀」



彼女はまるで、泣いているみたいだった。
罪を抱えた咎人のように、消え入りそうな声は震えている。

けれど沙紀の懺悔は、決して誰にも責められるべきものではなかった。

それに、俺自身も。
彼女の告白に驚きながら、それでもなお惹きつけられている。
目の前に差し出された画像を俺は、ひどく蠱惑的なものに感じていた。

激しすぎる鼓動に眩暈さえ覚え始めたころ、沙紀は俯いたまま囁いた。



「隠してのは、そういう部分。私、神木くんに…………こういうこと、されたい……」



その言葉は、俺の何かに命を吹き込んだ。
抵抗感も嫌悪もない。あるのはただ、隠しようもない期待と、歪な欲望の影。



「――って、こんなこと言う女、軽蔑するよね」



ようやく顔を上げた沙紀は、諦念を含んだような、少しすっきりした表情をしていた。

俺は彼女に手を伸ばす。
軽蔑など考えもしなかった。これで沙紀を嫌いになるなど、それこそありえない。



「……正直、驚いた。けどそれで軽蔑なんてしない。それに俺もある意味、共犯だろ?」
「共犯?」
「痴漢まがいのことして……図書室で沙紀のこと抱いて、俺も……すごく興奮したんだから」



俺にも性欲はある。卑猥なことへの興味も。
けれどその欲情をそのまま沙紀にぶつけることは、いけないこと、
彼女を傷つけてしまうことだと思っていた。

でも沙紀は、むしろそれを望んでいるという。
優しさや常識で和らげられていない、ありのままの欲望をねだられた予感がした。

頭を撫でていると、沙紀は声を振り絞る。



「神木くん」
「ん……?」
「あのね、わたしのこと…………いじめて。
 やらしくて恥ずかしい女だなって、神木くんに……お仕置き……されたいの」



普段は明るく、幼さを残している沙紀が、
目許を涙で潤ませながら淫らに願う。
その表情からは、いつものあどけなさが消えていた。

血が沸き立つような感覚がする。
昂りは一気に脳内を駆け巡り、そのまま股間を熱くした。


ディスプレイにはまだ、悦楽に耽る少女たちが映し出されている。
それはきっと、男の性欲を煽るための、ありもしない過剰な表現だ。
それなのに沙紀は、"こうして欲しい"と言う。

画像が焼きついたままの目で沙紀を見れば、ほの昏い感情が湧いた。



「……わかった」



俺が頷くと、沙紀は複雑な表情をした。
にわかには信じられないのか、うかがうようにこちらを見る顔が、
疑念と安堵とのあいだを行き来する。

俺はディスプレイの、ある一枚の画像を指差した。
複数の男に輪姦されている、少女の画像。



「ただ、こういうのはナシ」
「……分かってるよ。
 神木くんだから、我慢できなくてこうして言ったんだよ。神木くんにだけ――」



どこかうっとりと微笑んだ沙紀に手を伸ばす。
体の内側で煮えたぎっている情欲に、俺はもう逆らわない。
乱暴に腕を引くと、俺は彼女の小さな唇に、獣のように噛みついた。







後頭部を押さえられてのキスは、沙紀からすれば息苦しいらしかった。
唇を喰べるように味わい、口腔に舌を突き入れ、そしてくまなく舐め回す。



「ふ……ンンっ、ふゥン、ンッ……」



媚びるような鼻息が漏れ聞こえてくる。
顔に当たるその息も、鼻先をくすぐる沙紀の匂いも、そのどれもが俺を煽る。
急かされるようにトレーナーを捲くし上げ、
ブラジャーに包まれたままの乳房を、いくらか荒っぽく揉みしだいた。



「ンンっ、っあ、……ンッ、くっ」



苦しげな声も、眉根に皺を寄せた表情も、
劣情を加速させることにしか繋がらない。

慈しむように優しく、壊れものを扱うみたいに丁寧に。
そんな考えは本能の前に霧散する。



――沙紀を……征服してしまいたい。



俺は彼女の可愛らしい舌をきつく吸い上げる。



「ふゥンンンっ……!」



舌根が抜けてしまいそうなほど強く。
俺の口の中にまでやってきた舌にたっぷりと唾液を絡ませると、
沙紀は少しだけ驚いたようだった。

けれどすぐに彼女は双眸を蕩かせて、
ほとんど躊躇うことなく、混じり合った唾液を嚥下する。

こくん、と喉が上下したのを見て、頭を殴られたような興奮を覚えた。

俺の体液が、沙紀の体内に浸みていく。
溢れるままを咥内に流し込むと、沙紀はまた、それを飲み込む。
そして、まるで高熱に浮かされているように艶やかな息を吐いた。



「ふ、ぁ……、ンク、ン……、あ――っ」



汗ばむ肌に手を這わせ、ブラジャーをずり上げる。
指で触れた乳首はささやかにしこりを増して、沙紀の興奮を俺に伝えてくれた。

俺は沙紀を抱きかかえると、彼女をベッドの上に押し倒した。
華奢な体を震わせて、彼女はうかがうように俺を見上げている。

トレーナーを両手で捲り、肌を暴いていく。
きめ細やかな肌はほんのりと桜色に染まり、しっとりと汗ばんでいた。

呼吸に合わせて上下する肌に、俺は唇を落とす。

以前、沙紀が"大事なところ"と言った、子宮の上。
腹の薄い皮膚に甘く噛みつきながら、服の中に手を侵入させていく。

ブラジャーのホックを外し、浮いたカップの隙間から膨らみに手を乗せる。
しこりを保ち続けている先端に指先が触れると、沙紀の口からは甘ったるい吐息が漏れた。


声を抑えるためか、彼女は口元に手を当てている。
けれど決して、俺の挙動から目を離さない。
視線には、あからさまな興奮の色が見て取れる。



「……ここも、大事だろ」
「ひゃっ……! くすぐったいっ! あはっ、……ゃ……っ!」



へそに舌を差し入れると、ひくっと腹が震えた。

くすぐったそうに身を捩っていたけれど、
乳首を摘みながら舐め上げると、声は喘ぎに変わる。



「……こんなとこまで気持ちいいのか?」
「ちが……ン……触られてるから、だよ……」
「へそを?」



ぎゅっ、と軽く、膨らみの頂点に爪を立てる。

普段ならきっと口にはしないだろう単語を、彼女の口から聞き出したい。
そんなことを思う自分自身に、俺は密かに驚いている。



「ひ、ぁ……! あ……! ち……ちくび……を……ぁんっ」
「――沙紀は……こんな乱暴なのがいいのか」
「ふあっ……あ……ん、う、うん……ッ」



呆れたような声音を使いながら、俺はたしかに悦んでいた。
目尻にうっすら涙まで浮かべて、それでも従順に、されるがままの沙紀。
愛おしいと思う。
けれどその純真な想いは、暴れ狂う欲情の餌になるようだった。

下腹もへそも脇腹も、あばらの上も味わいながら、乳首を弄る。

唾液に塗れた沙紀の腹から口を離すと、俺は彼女のトレーナーをたくし上げようとした。
けれど襟から頭を出したあたりで、布が絡んで引っかかる。
沙紀の汗が布を湿らせているせいだ。
手こずっていると、ふと、妖しい考えが頭をよぎる。

このまま、動けなくしてしまえ。


抗い難い誘惑に乗せられた俺は、
おもむろに、彼女の腰にあったベルトを外した。

細身の沙紀が使っていたベルトは革紐が編み込まれていて、
どの部分でも金具を留められるタイプのものだった。

おあつらえむきの道具を手にいれて、沙紀の身体をうつ伏せに反転させる。



「んっ……神木くん……?」



沙紀は少し不安げな声を出して、顔を捩ってこちらを見ようとする。

俺はその声を聞き流すと、トレーナーとブラジャーがまとわりついたままの腕を、
腰の後ろに回させた。
そして布地の塊の上から腕にベルトを巻き、きつく締めて金具を留めた。



「っ……、も、ぅ……動け、ないね……」



身体が再び仰向けにされると、沙紀は顔を火照らせて言った。

彼女の自由を奪ったことに強い満足感を覚えながら、
俺はなけなしの理性を働かせる。



「沙紀……本気で止めて欲しい時は、ストップって言え」
「ぇ……? あ……うん。……ありがと――っ」



意図を汲んだ彼女が頷くと、俺は余計な冷静さを消し去る。
礼を言いかけた唇を、キスで塞ぐ。



「……それにしても……嬉しそうだな、沙紀」
「っ……!」
「こんなことされてるのに……嬉しいのか?」



わざと蔑むように言うと、沙紀は図星だと言うように顔を赤くする。
彼女の瞳の奥が期待に染まっているのを、俺は見逃さなかった。


少しずつ、俺はその方法を理解し始める。
沙紀の体を、熱く熟れさせる方法。

たとえ無慈悲な意地悪も、憚られることなく言えばいい。
彼女は「いじめて」と、はっきりと願っていたのだから。


腕とトレーナーの布とが体の下にあるせいで、
沙紀の腰は自然と浮いた格好になっている。

上げられた下半身に手を伸ばし、俺は彼女のジーンズを脱がせた。
ショーツごとずり下ろして両足を抜くと、沙紀は恥ずかしげに足を縮こませる。

閉じられた膝頭を割り開いて、俺は尋ねる。



「沙紀、確かめていいか?」
「……なに、を?」
「お前が興奮してるかどうか」
「……あ、……や、やだっ……!」
「やだ、か」
「っ……!」



首を小刻みに振っても、沙紀はストップとは言わない。
そのいやらしさを暗に指摘すると、彼女は唇を噛んで脚を閉じようとした。

腿を震わせながらの精一杯の抵抗には構わず、俺は手に力を入れる。
ぐっ、と膝を押し両脚をM字に広げさせると、つけ根に息づく秘所がまる見えになる。

少しも触れていないはずのそこはすでに、
まるで熱で溶けてしまったように、花弁を綻ばせていた。

俺は吸い寄せられるまま、そこに顔を近づけ淡い茂みを舌で掻きわける。
舌先に、秘唇から零れた蜜がぴとりと触れた。

ぢゅる、ぢゅ、とわざと水音を立てて吸いつくと、沙紀は顔を背けて首を振る。



「ぁっ……! やだっぁ……おと……」
「味が濃くなってきた」
「ひゃぁっ……んっ……!」



俺は膝を押さえていた手を秘部にやり、膣口を指で広げた。



「ぁっ……は……はずかし……ぃ……っ!」
「沙紀のこと知りたいからな…………ちゃんと、全部見ないと」



花芯には触れないまま、俺は舌と指先で沙紀のそこを味わった。

両手の人差し指をぬかるみに入れる。
汗と混じり合った果汁が滴って、手のひらをぐっしょりと濡らした。

俺は、自分にはない器官を隅々まで見た。

かぎ状に曲げた指を左右に広げると、熟れた果実は、くぽ、と卑猥な音を立てて割れる。
蜜に濡れた粘膜まで視線に晒すと、沙紀は身を捩って羞恥を訴えた。



「やぁ……っ、広げちゃ……ッ、ぅ、あ」
「沙紀……奥まで見える」
「あ……! っく、ん」
「ひくついて、誘ってるみたいだな。それに――」



すんすんと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。
濃密で、頭が麻痺してしまいそうな匂いがする。



「興奮してる……いやらしい匂いがする」
「ふあぁ……っ、ん!」



綻びきっているそこに再び顔を寄せると、俺は開いた口に舌を差し入れた。
沙紀が喘ぐたびに内壁は波打って、舌先を締めつけようとする。
まるで、貪欲にねだられているみたいだ。

俺は一旦、蜜路から舌を抜くと、今度は秘核のすぐ下に舌先を向けた。
濡れそぼる粘膜にある、小さな孔。
小指の先さえ入らないだろう尿道口を、決して傷つけることなく、優しく舐った。



「ひゃッ! んあ、あ……ッ、な、なに……? そこ……ッあ」
「さあ?」
「なん……かっ……、で、……でちゃ、いそう……になるぅ……っ」
「出そうって、なにが?」
「あっ……ア……、やっあ、あ、っく、……おしっこ……、でちゃいそに……なるよぉ」
「でも、気持ちよさそうだけどな」



くすぐると、そのぶん陰唇はひくつく。
たまに舌先にあたる花芽は、明らかに腫れてしこりを増していた。

脱力して体が沈んでしまうのも許さず、
俺は沙紀の腰を抱えるようにして口淫を続ける。


沙紀が零した愛液は、俺の唾液と一緒になって後ろに潜むすぼまりまで垂れていた。
俺はそのせせらぎに沿うように、少しずつ舌を下ろしていく。



「ひっ、あぁっ! あ……あ、だめ……っ、ダメ……ッ!」
「だめって、なにが?」
「ッ……! く、……そんなトコ……っあ! あ……だめぇ……」



沙紀は、抵抗のそぶりを見せる。

ストップと言われれば、約束通り手を止めるのに。
どれだけやめたくなくても、冷静さを取り戻して我に返るつもりでいるのに。
それでも沙紀は、駄目だと首を振るばかりで制止を口にしない。

抑えきれない昂りに、ぞくりと背筋が震えた。


こいつは、どこまで俺を乱すつもりなんだろう。
俺は、どこまで本性を暴かれるのだろう。


沙紀の体からは、石鹸の匂いと淫らな牝の匂いしかしない。
不快なものは、何一つなかった。

彼女のささやかすぎる拒絶を気にも留めないまま、
俺は舌全体で、沙紀のすぼまりを舐め上げた。



「ひゃっ!」



健気に口を閉じているそこに、潤いを与える。
そして尖らせた舌先を、まるでセックスでもするように刺し入れた。



「ふあっ! あ……だめっ、だ……メ、ふ、く……ふ、くぅっ……」
「なにが、ダメだって?」



俺はつい、苦笑いしてしまう。



「そんな蕩けた声、出しといて。少しもダメじゃないだろ」
「あっあ……! あ……のーみそ……とけ、ちゃっ……ふ、あっ」
「ここも気持ちいいトコ?」
「わ……わかんっあ、ないっ……けど……けど、っ、頭のなか、しびれる……っ」



脳の回路が乱れて、もう、何もかもが興奮と快楽に繋がっているのかも知れない。
よく分かる。俺も、そうだから。


沙紀は、縛られてされるがままでいることに。
俺は、そんな彼女を弄んでいることに。ひどく興奮していた。

知らなかった。
自由を奪い取ってしまうことが、こんなにも昂りをもたらすことだなんて。
そして思うがまま与えることが、こんな感情を生むなんて。



「……いつか、ココの初めてももらうか」



唾液でいくぶん柔らかくなった菊口に浅く指を出し入れしながら、
俺は相談と言うよりもむしろ、宣言をした。



「ふぁぁ……んっ……うん、……うん。……もらって……」
「……ほんとに……いやらしい奴だな」



悦んで頷いた沙紀が、愛おしくて堪らない。いっそ食べてしまいたいほどに。
際限なく甘やかして、そして、堕としたい。

俺は少しだけ不安になった。
こんなにも恋しいのに、この残酷な気持ちは一体、何だろう。



「ああ、そういえば……お仕置き、されたいんだったっけ?」



そう言って俺は、沙紀の身体をひっくり返した。

あぐらをかいている腿の上に彼女を乗せ、
露わになった尻に手のひらを被せる。



「ほら、お仕置だ――」



大きく手を振りかざす。
バシィッと、沙紀の尻を打つ音が部屋に響いた。



「ぃっ!! あ! あっ――!」



俺は続けざまに手を振り下ろす。
幼子を叱るように、繰り返し何度も。
彼女自身の淫らさを、窘めるように。


殴るほど強くはないけれど、決して優しい力ではない。
その証拠に、沙紀の肌はみるみると、林檎のように赤くなる。



「ひぁっあんっ! いっ、いたぁ……! いたいぃ!」



俺は何回かに一度、弱めた力で、ぬかるみにも手を打ちつけた。
水面を弾くような音と一緒に、沙紀はあからさまな嬌声を漏らす。



「……やっ! そこっは……あん! あ……ふ、ぁぁぁ……ッ」



打ちつける手がひりひりと痛み出したころ、沙紀の声は変質する。
痛みに泣いているようなか細い声の中に混じる、甘ったるい媚び。

腿に乗っている彼女の肌は汗ばんでいて、
ふと触れた秘唇はとめどなく、蜜を溢れさせていた。

すっかり惚けているそこに、中指だけを埋める。
物欲しげな収縮を無視して、浅くゆっくりと、焦らすように。

けれど、それさえ沸点に近づいていた沙紀には十分な刺激だったようで、
彼女はすぐに限界を口にした。



「あ! っ……ふ、ぁ、ァァっ、ァ、だめぇ……、いっちゃ……っ! ふ、ぁっ」



俺はすっと、全ての行為を止めた。



「たしかコレ、お仕置き……だったよな」
「ぁぁぁ……っぁ……くぅ、……ひどい……あぁ」



イキそびれた彼女はせわしない息を吐きながら、
手を擦り抜けていった快感を掴むように膝頭をもじつかせた。

俺は沙紀の背を撫でながら、焦れて悶えている様子を眺める。



「ずいぶん興奮してるな……」
「……神木くん、だって……」
「なにが?」
「……っ、あたってる……おなか、に」
「――ああ」



首を捩ってこちらを見上げた沙紀が、どこか物欲しげな瞳で呟いた。
うつ伏せの沙紀の腹に、俺のペニスがあたっていたらしい。



「責任……取らせるか」



俺は服を全部脱ぐ。
呆れるほど先走りの液を流している自身を出すと、
それ以上、何も言わず、沙紀の頭を股間に押しつけた。



「んう! ……ンン!」



沙紀の顎を掴み、親指で唇を割り開く。
なかば無理矢理こわばりに口を塞がれて、彼女は眉をたわめた。
桜貝のような可憐な唇に侵攻する、グロテスクなもの。



「歯にあてるなよ」
「ンっぐ、ン!!」
「わかった?」
「ンンンー……ッ!!」



頭を押さえられた沙紀は、イエスともノーとも、ストップとも言えない。
きっといま俺は、ひどいことをしている。それが愉悦になる。

親指で沙紀の耳孔を押さえる。
耳の奥で音が――口中を掻き回される音が反響するようにしてから、
俺は彼女の頭を前後に揺さぶり始めた。



「ンッ!! グっ、んぐ、ぷぁ、っン! んぅーっ!」



時折、先端が喉の行き止まりにぶつかるのを感じる。
そのたびに沙紀は、苦しそうな表情で息を詰まらせる。

いつかテレビで見た、水責めの光景を思い出した。

沙紀の息が続く限り、気道を塞ぐほど深く刺す。
くぐもった悲鳴が聞こえたころに、浅く。


ひどい仕打ちだな、と俺自身でさえ思う。

それなのに彼女は、まるで酸素を与えられたことに感謝でもするかのように、
唇をすぼめてその柔らかな舌をこわばりに絡めた。

慣れを感じさせないたどたどしい動き。
けれどそんな懸命さが嬉しくて、いじらしさが余計に欲情を駆り立てる。

やがて興奮は限界を迎えて、俺は沙紀の頭を激しく揺さぶった。



「ンッ……! ム……ングっ、んあ、っぷあ、くるしっ……! ンー……ッ」
「っく、……出すぞ」
「ンンン――ッ!!」



根元に射精感がせり上がってくる。
俺はより一層、沙紀の後頭部を押さえつけると、
息もつかせずその咥内に欲望を吐き出した。

どくんどくんとペニスが律動するたびに、彼女の口に精液が溜まる。
ぬるい感触に包まれながら、俺は片手で頭を押さえたまま、沙紀の鼻をきゅ、と摘まんだ。



「ンンッ!?」
「ちゃんと全部、飲めよ……?」



瞳に涙を溜めた沙紀は、こくん、と喉を鳴らした。
幾度かにわけて、彼女は俺の精を嚥下する。
全て飲み終えたところで、俺はようやく彼女の鼻を解放した。



「ぷあっ! はぁっ、はぁっ! ン、ケホッ、ンっ」



呼吸を整えている沙紀の頭を優しく撫でながら、俺は妄想する。

さっき放った精液は、沙紀に吸収されるだろうか。
小さく細かく消化されて、いずれ、彼女の細胞にでもなるかも知れない。

この体のどこかが、俺からできている。
そう思えば、目には見えない沙紀の奥深くを、穢したような気分になった。

そんなくだらない妄想は、一度では収まり切らない劣情に変わる。



「じゃあ今度は、ご褒美だな――」



とってつけたような口実で飾って、俺は二度目を告げる。

沙紀の身体をベッドに下ろし、腰を持ち上げ四つん這いにさせる。
彼女は頬を枕に押しつけて、首だけ捩ってこちらを見た。

俺は躊躇いなく、背後から沙紀を貫いた。



「っ!! あぁぁああ!」



一気に最奥まで突かれて、沙紀の身体は強張った。
ごぢゅ、と肉が絡み合う音とともに、
俺の欲望は彼女の深くに頭を埋める。

焦らされた体には強すぎる刺激だったらしい。
軽くイッたのか、沙紀の媚肉がひくひくと震える。



「ふあっあっ、あっ、あああっん!!」
「気持ちいいか……?」
「あっ、アッ! うん、っ、きもち、いいっ! かみきく……っ」
「そういえば――」



俺はそれまで触らずにいた秘芽に、強く指を押しつけた。



「あぁぁっ!」
「ここ、まだ苛めてやってなかったな」
「ひあぁっ、あっ、あ、だめぇぇぇ!」
「なにがダメ? ちゃんと言えよ。わかんないだろ」



とぼけながら花芯を小刻みに弄ると、沙紀の内壁は切なげに収縮を繰り返す。



「くっ、……く、クリト、リス……さわるの……あっ、あ、ダメ、また……いっちゃ……!」



沙紀がうつ伏せでよかった。鏡がなくてよかった。
きっと俺はいま、歪んだ笑みを浮かべているだろうから。



「ああ。ほらまた、おまんこが締まってきた」
「はずか……し……ぅ、あっ! あっ、きもち……ぃ
 あ、かみきくん、の……お、おちん……ちん……んっ、あぁぁ!」



幼女のようなたどたどしさで、沙紀は卑猥に喘ぐ。
まだ他の誰も知らないそこに、俺のこわばりは無遠慮な抽送を繰り返す。



「……変態だったんだな、沙紀は」
「あぁっ、あ、ご、ごめんなさいぃっ、あっ、だって、だって――!
 きもち、いいんだも……ッ、あ、いっちゃ、う、あぁぁぁ!!」



犯罪じみた行為なのに。後ろ手に拘束されて、自由を奪われてさえいるのに。
俺が感情を押し殺した冷たい声で罵ると、沙紀はそれら全てを快感に変換して、またイッた。


そして他ならぬ、俺自身も。
彼女を詰るたび、背筋をざわざわと悦楽が這う。

体のぶつかり合う淫猥な音が、白とピンクの可愛らしい部屋にこだまする。
沙紀の全てを穢しているような感覚に、俺は歯を食いしばった。



「ッ、……沙紀。どこに出されたい……?」
「んぁ、ぁああ、あっ……っ! な、なか……っ」
「なかって?」
「ふあ、んく、く、お……おま、ん、こ……の……なか……っ!!」
「……妊娠するぞ」
「しない……からっ、……へーき、だからぁ、ああ、おねがい……っ」



理性と激情とがせめぎ合って、警鐘は眩暈を引き起こした。
子宮を突き上げるように動きながら、俺は沙紀に尋ねる。



「どういうことだ」
「ぴ、ピル、飲んでる……! かみき、くんのっ……欲しい、せーえき、なか……に!」
「……中に欲しくて?」
「っ……あ、あぁああっ、うん、うんっ! ごめんなさい……!」



きっと、驚いて呆れ果てるのが正解だ。
なのに、俺はもう正解を選べない。

沙紀の中に吐き出したい。
こいつを全て、俺のものにするために。

子宮口の肉の輪に、先端を擦りながら突き入れる。



「……望みどおり、ナカに出してやるよ」
「ふあぁ、あ……! ちょうだい……! かみき、くんの……っ」
「ただし――」



律動のペースを速めながら、俺は沙紀に囁いた。



「いずれは、ピルなんて止めさせるからな」
「あっ……ァ、……どーゆぅ……あ! ア!! ひゃぁああん!」



俺は沙紀の腹部を抱え込む。
そしてこれ以上ないほどに強く腰を打ちつけると、
彼女の最奥にめがけて、精を迸らせた。



「っく……! 沙、紀……っ!」
「あ……!! ァアアアアアあぁぁん!!」



絶頂に震えながら沙紀のそこは波打って、
放たれたものを美味そうに飲んでいるようだった。

俺は少しだけ硬さを失ったペニスを粘膜になすりつけながら、
まだ熱を冷まさずにいる秘芽に手を伸ばして言う。



「沙紀。もっと飲めよ。欲しかったんだろ?」
「えっ? わ、わたし、もういった、よ……っ!? あ、だめ! あっ、ゃぁあ!!」
「は……っ、ひくついて、ほんとに飲まれてるみたいだな」



たやすく絶頂に打ち上げられて、沙紀は絶え絶えの息で喘ぎ泣いた。

やがて俺が手を離すと、彼女はくったりと力を失くして枕に顔を埋めた。

腰を引き、彼女からペニスを抜く。
蜜口はそれぞれの体液に穢され、余韻にしてはあまりに淫らな光景を俺の目に晒している。

沙紀は肌を上気させながら、失神したように動かない。

俺は彼女の手の拘束を解き、身体を仰向けにさせる。
汗で頬にはりついた、乱れた髪を払う。



「……腕、平気か?」
「…………ん…………うん…………へーき」



目を閉じ、息を整えていた沙紀が、うっすら瞼を開けて俺を見る。



「あっ……つ、いたた……」
「ひねったか?」
「ちが……、痺れちゃった……」



一瞬、顔をしかめていた沙紀は、いつもと同じ、あどけない笑みを浮かべた。
照れ臭そうな表情をして、俺に手を伸ばしてくる。



「あのね……動けなくされるのも嬉しいけど、こうできるのも、嬉しい」



沙紀はそう言って、俺の首に抱きついた。

鼻先に、甘い香りを感じる。
もう覚えた。これが沙紀の匂いだ。



「神木くん…………ありがと」
「……お礼言われるようなこと、何もしてないと思うけどな……」
「ううん、そんなことない。……だって私、すごく、嬉しいもん」



何故か沙紀は、泣きそうな顔をした。

不思議なほど、温かな感情が胸に降り積もる。

俺は彼女の顔に微笑みが浮かぶことを願いながら、
その柔らかな頬に、ついばむだけのキスをした。



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